1.
眠りすぎたかもしれない。
瞼の奥が鈍く痛み、重い。
久しぶりにベッドの上で寝ただけだというのに、この体たらく。自分がどんどん、当たり前の生活から遠のいていっているような気がする。
軋む階段を踏んで、宿屋の一階にある食堂へ下りる。奥の方のテーブルで、フェスターが立ち上がるのが見えた。
「おはようございます。よく眠れたようですね」
「僕が最後か。情けないな」
丸いテーブルに据えられた四つの椅子の、最後のひとつを引く。
「短い間にたくさんのことがありました。お疲れだったのです」
「それは皆同じだ」
ルクスもヴァンも、テーブルに並べられた朝食の相手に忙しいようだった。野菜を煮込んだスープの匂いがシグルドの鼻腔をくすぐるが、起きぬけのせいか、あまり食欲をそそられない。
いつでも自分の体調を保つために、必要な栄養を摂ること。旅を続けるためには、タフでいなければならない。
疲労で食が細くなるなど、たくましくないな、と思う。
屈強さが必要だ。これからの旅は、特に。
「おや、早いね。よく眠れたかい?」
恰幅のいい女将が、スープの入った器をシグルドの前に置く。
「夜半に飛び込んで、申し訳なかった」
体を捻って、女将を振り返る。彼女は大柄な体を揺すって、豪快に笑った。
「気にしなくったっていいさ。こういう商売をしていれば、色んな客が飛び込んでくるしね。それに、福音を持っている人に出会うのは、こんな田舎じゃ珍しいからね」
女将の目がまぶしいものを眺めるように細められた。眼差しは、シグルドの頭上を通り越して、対面に座っているヴァンの瞳に注がれている。
視線を感じて、ヴァンが顔を上げた。片手にパンを握ったままだと、随分とあどけない。
黒と翡翠色の色違いの双眸は、彼が魔物との契約者である揺るぎない証だ。
「困ったことがあったら、何でも言っとくれ」
いとおしむような眼差しを残して、女将は厨房のほうへ戻っていった。
*
「アスガルドから半日も離れてない場所なのに、全然違うんだね。びっくりした」
よく均された街道を、北へ進む。天気もよく、先頭を歩くルクスの足取りも軽い。
「……変な気分だ。落ち着かない」
それに比べ、ヴァンは憂鬱そうに足元を見つめている。
「なんで? みんなヴァンに会えて嬉しそうだったよ?」
くるりと体ごと振り返って、ルクスが首を傾げる。
「こういうもんだって知ってたし、予想もしてた、けど。あんまり違いすぎて、ちょっと面食らったっていうかさ」
イドゥナが使っていたという地下通路を通り抜け、ブリガンディア領内の田舎町にだとりついたのは、夜半すぎだった。
追い払われることを覚悟で扉を叩いた宿屋に、予想以上に快く迎えられたのは、ひとえにヴァンのおかげだ。
両目の色が違う人間――契約者は福音の徒と呼ばれ、人々から崇められている。
アスガルドでは呪われた民と迫害されているイドゥナが、広大な森を挟んだ隣国では聖人として崇拝されている。今まで隠れて細々と生きてきたヴァンが、素直に喜べなくても無理はない。
「ブリガンディアのイドゥナは、アスガルドの扱いがあんまりだって、みんなブリガンディアに来ればいいって、何度も言ってよこしたって。婆様が言ってた」
うつむいたまま、ヴァンは黙々と足を前へ運ぶ。
「だけど、イドゥナは生まれた土地と強く結びついている種族だし、それに……」
きょとんと立ち止まっているルクスの横を、足早に通り過ぎた。
「はじめから恵まれてて愛されてた人たちに『助けて"あげる"』って言われたってさ、素直に『お願いします』なんて、言えないだろ。ただ妬ましくて、ひがんでるだけだって分かってるけど……。だから、ブリガンディアのイドゥナたちとは、ほとんど交流がないんだ」
近づきがたいヴァンの背中を見送って、ルクスは小走りにフェスターに並んだ。
「アスガルドとブリガンディアって、なんでこんなに違うの? すぐ隣なのに」
ヴァンに気を利かせたつもりなのか、小声で問いかける。
「アスガルドは、南から周辺を飲み込んで、急激に成長してきた軍事国家です。比べてブリガンディアは、遥か昔からこの大地に根付く宗教国家。アスガルド人にとってイドゥナは、強力な魔法を使って侵略を妨げる敵。ブリガンディアにとっては、国を守る力を操る聖人。歴史が人の立ち位置を変えます。信じるものが違えば、重んじるものも違ってくる」
「……そういえば王都って、ずーっと南にあるんだっけ。あたし、自分の国の王様の顔も知らないや。数年前に、新しい王様になったことぐらいしか分からない」
「特にラッセルはアスガルド領でも最北端ですから、それも無理はない。特に今、王都は継承問題の名残で遠くの領土まで手が回らないとも聞きます。ラッセルがドラゴンに蝕まれていても中央から正規軍が送られてこないのは、それが理由だとか」
「確か、弟とか叔父さんとかとケンカしたんだよね」
「……身も蓋もない言い方をするな」
さも得意げに言い放つルクスに、シグルドは盛大に嘆息する。
「だって、そういうことでしょ? 叔父さんは遠くに追い払われて、弟は負けてから王都に近づかなくなって、あちこちフラフラしてて"宿無し王子"って呼ばれてるんでしょ?」
「ルクスは詳しいですね」
「醜聞ばかりが広まるのは、どこも同じだ」
「もう、シグルドってば文句ばっかり!」
少女はむくれて唇を尖らせる。旅を始めた頃と比べると、随分と幼い印象になった。警戒心や頑なさがほぐれてきた証だろう。
「無駄口ばかり叩いていられるか。日が暮れる前にセドの門をくぐるんだ。野宿は嫌だろう」
「セドはブリガンディアの北端です。それほど大きくはありませんが、鉱山で有名な町だとか。そこで今後の旅の支度をしましょう」
「ラッセルに戻る方法を考えよう。ここから一番近いのは、サージェントだ。しかし……」
シグルドは、街道の右手を仰ぎ見た。
雪化粧をした山が、見事な偉容を誇っている。
アスガルドとブリガンディアを区切る美しくも厳しいルオンノタル山脈だ。
「山脈を越えるのは、現実的じゃないな」
万年雪を宿すルオンノタル山脈を越えるのは、容易なことではない。温暖な気候に慣れ親しんだアスガルド人が、山脈のあまりの寒さにブリガンディア侵攻を諦めたという噂もある。
「しかし、サージェントに抜けるのが一番安全でしょう。サージェントには、侯爵とオーガスタ様がいらっしゃいます」
「オーガスタ、さま?」
誰? とルクスが首を突っ込んでくる。
「サージェント候のご息女です。ルクスよりも少し年上ですね」
「貴族のお姫様かぁ。どんな人? 会ったことある?」
「無駄話は終わりだ。急ぐぞ」
興味津々、と顔に書いたルクスの問いには答えず、シグルドは足早になった。てっきり、「お前とは天と地の差だ」なんて意地悪なことを言われるかと思っていたのに、肩透かしを食らった心地だ。
不思議そうにフェスターを見上げると、公子の姉代わりは、仕方がないとばかりに苦笑していた。
「素敵な方ですよ。お会いすれば分かります」
意味深に微笑して、フェスターも公子の背を追った。
「……なによ」
久しぶりにベッドに寝て、天気もよく、足取りも軽かったのに。急に面白くなくなった。
ルクスは思わず、足元に転がっていた小石を蹴飛ばした。
原因の分からない胸のわだかまりが、不快だった。
*
「スルトは死んじゃったんだねぇ、かわいそう」
笑いを含んだ少女の声が、さして哀れんでもいない調子で言った。
「ヘズが民衆を煽っている。シグルドたちはおそらく、ブリガンディアに抜けるだろう。――閣下、追いますか」
若い男が、部屋の奥に座す人影を振り返った。
「グレンデルを行かせた」
低く、深い声が答えた。
一言で、周囲を威圧する重みを持つ声だった。
「グレンデルはブリガンディアの生まれだ。地の利もあろう。我々は、計画を進めなければならない。ヘズの報告によると、要らぬ介入があるようだ。アルヴィース、お前はその男を追え」
「カリストフさま、ハティは? ハティもお役に立ちたいの!」
愛らしい白いドレスをまとった少女が、小走りに豪奢な椅子へ駆け寄る。
「ハティは領城にいるのだ」
「いつもそればっかり。ハティじゃお役に立てないの?」
むぅ、と少女は唇を尖らせる。青と金の双眸が、不服そうに揺れた。
大きな男の手が、少女の形のいい頭をゆっくりと撫でる。
「お前がいなければ、この城は守れまい。お前の力を頼りにしているのだよ、ハティ。お前がその気になれば、イル・ラッセルなど一夜で滅ぼせよう」
ハティは、猫の子のように心地よさそうに目を細める。
そして、ぎらつく金と青の瞳を開いて、ぞっとするような笑みを浮かべて見せた。
「そうよ。カリストフさまの邪魔をするやつは、みんな――みんな殺してあげる」
2.
「なんか、納得いかない」
唇を尖らせて、ルクスが不平をこぼした。
「何度目だ、諦めろ」
意地悪く指折り数えてなどいないから、正確な回数は分からない。しかし彼女は、同じような不満を二桁ぐらいはこぼしている。
「そういうシグルドだって、納得してないでしょ、絶対!」
「もう終わったことだ。今更セドに戻っても仕方がない」
同じような問答を、何度繰り返したか知れない。確かにシグルドの胸にもわだかまりがないわけではないが、賽が投げられてしまった以上、前へ進むより仕方がない。
「でも……嘘ついて出てきたみたいで……」
「セドの人たちがくれるって言ったんだし、別に気にすることないと思うけど」
ヴァンはなだらかな下り坂を順調に下っている。その背には、セドの人々が提供してくれた食料を背負っていた。
「あの人たちが、勝手に化け物退治を依頼してきたんだろ。俺たちは元々その遺跡に行くつもりだったんだし、手に負えなければ逃げればいいしさ。俺たちが戻ってこなかったら、あの人たちは諦めて別の"勇者さま"を探すよ」
ヴァンが、一番割り切っているようだ。"当事者"にそう言われてしまっては、ルクスも不満ばかりを並べていられない。しぶしぶ口をつぐんだ。
一行は、セドの北に位置するという太古の遺跡に向かっていた。
"アスガルド領まで広がっている"という広大な遺跡に住み着いた魔物を、退治するために、だ。
事の発端は、早朝まで遡る。
無事にたどり着いたセドの街で、シグルドたちは過分なほどの歓待を受けた。正確に言うならば、歓待を受けたのはヴァンなのだが。
旅の疲れを建前に、酒宴の申し出をいくつも断った。しかし、宿屋に引っ込むことができたのは、結局真夜中を過ぎた頃だった。
熱烈すぎる歓迎に戸惑いつつ、寝床についたシグルドたちの安眠は、しかし、数時間で破られることとなった。
けたたましい悲鳴で目が覚めた。
警戒することに慣れすぎた体では、惰眠を貪ることができない。僅かな変化ですぐ目が覚める。
隣のベッドでも、ヴァンが跳ね起きていた。
夜明け前だ。ヴァンが開け放った窓からは、ひんやりとした夜の冷気が吹き込んでくる。
「広場に人が集まってる」
短く状況を伝え、ヴァンは部屋を飛び出した。
同じように外へ飛び出す人々が多いのか、宿屋の目の前にある広場は、にわかに騒がしくなる。
階下へ下り、開け放たれたままの扉から広場へ出たシグルドの耳に、悲痛な女の叫び声が飛び込んできた。
「どうか、セドをお助けください!」
一人の女が、ヴァンの前にひざまずいた。
祈りの形に両手を組み合わせ、涙声をしぼりだす。
気づけば、ヴァンを取り巻くように人垣が出来ていた。
ひとり、またひとりと、町の人々がヴァンの前にひざまずく。戸惑うヴァンの足が、怖じたように一歩後ろに下がった。
「どういうことだ」
異様な光景だった。シグルドはヴァンを庇うように、間に割って入る。
「フレイヤの遺跡に、魔物が棲みついたんです!」
はじめにヴァンにひざまずいた女が、涙で濡らした顔を上げた。
「夜になると町へやってきて、建物を壊したり、家畜を襲います! 今日はとうとう、私の弟が襲われたんです……。私たちは無力です、どうかお力をお貸しください!」
「中央に被害を届け出ましたか?」
人垣を割って、フェスターが進み出た。普段纏っている外套がないため、失われた左腕があらわになっている。息を呑む声があちこちから上がった。
「セドが採掘する鉱石は、中央にとっても重要なはず。届けを出せば、皇帝陛下もみすみす見殺しにはなさいますまい」
哀れみと好奇心が入り混じった視線を左腕に受けながら、フェスターはぐるりと人垣を見渡した。好奇の眼差しならば、もう慣れた。
セドの人々は、困惑したように顔を見合わせる。
「……セドは、どこの町からも遠いから」
「峠を越えるのが大変だから、中央の人なんて、滅多に……」
ぼそぼそと、歯切れの悪い声がいくつか上がる。
「では、ご自分たちで魔物に対処していたと?」
返る声はなかった。気まずそうに顔を見合わせる様子に、フェスターは深々と嘆息した。
「襲われるままにしていたということか」
「だって、私たちには何の力もないもの!」
ひざまずく人々の間から、ひとりの少女が立ち上がった。
「巫女さまや、軍の人たちと違って、武器を持ったことだってないわ! 怖くって、戦うことなんて、できるわけない!」
「戦いに出る人間が、何も恐れずに戦っているとでも?」
怒気を帯びたフェスターの切り返しに、少女はきつく唇を噛み、顔を両手で覆ってうつむいた。
少女のすすり泣きと共に、重い沈黙が周囲を満たした。
「――分かったよ。俺が行く」
沈黙を破ったのは他でもない、民の懇願を一身に受けた、ヴァン本人だった。
ざわりと人波が揺れ、祈りの言葉がいたるところで漏れた。一度は解いた腕をもう一度組みなおし、深々と頭を垂れるものもいる。
「ヴァン……」
驚きに目を見張り、シグルドは背後に庇ったヴァンを振り返る。
信じるものが違うだけで、虐げられたり祀り上げられたりすることに、一番戸惑っていたのはヴァンではなかったのか。
顧みたヴァンの色違いの双眸は、昇りかけた朝陽の光を受け、一層神秘的に輝いていた。
*
夜が明け、陽が高く昇ってから、一行は救世主と崇められながら出発した。
ヴァンは魔物退治にかこつけて、ちゃっかりとセドの人々から食料や旅に必要なものを提供してもらうことに成功したのだった。
純粋無垢なルクスが、「納得いかない」と憤慨する気持ちは、シグルドにも分かる。
いくら自分たちに力がないからといって、通りすがりの旅人に魔物退治を頼むという神経が、どうしても理解できないのだ。
自分たちで対策を講じて、それでも駄目だから手伝ってくれというのなら、まだ分かる。いくら神の使いと崇める「福音の徒」だろうと、全て丸投げでは、虫が良すぎる。
いや、本当に福音の徒を崇めているのならば、危険な遺跡に単独で向かわせたりはしないはずだ。
宗教は人を救い、心を支える。しかし、依存しすぎるのは――。
ルクスは更に、そんな人々をうまく丸め込んで食料を提供させたヴァンの所業にも、納得できない様子なのだ。
アスガルド領まで続いているという遺跡を抜けることができれば、国境を通らずにラッセルへ戻ることができる。元々、行くはずの場所だったのだ、とヴァンは言う。あそこで町の人々の糾弾を続けても、こちらが追い出されるだけだった、とも。それは事実だろう。
しかし、消化し切れない複雑な、名づけようのない感情が渦巻いているのも、また事実。
「シグルドは高潔だし、フェスターは騎士だから、分からないと思うけど」
隣に並んだヴァンが、唐突に口を開いた。
「本当に武器を握ったこともない人たちなんて、あんなもんだよ。イドゥナも最近は契約者が減ってる。アスガルド人に迫害されてる、魔力を持たない人たちは、どうやって守ってもらうかを考えるのに必死なんだ。別に計算してやってるわけじゃない。セドの人たちだって、悪気があるわけじゃないんだ」
「里にいたときも、ああいうことがあったのか」
「まあね」
さらりと、ヴァンは頷いた。
ヴァンはルクスよりも年下だ。表情も、あどけなさを随分と残している。それでも彼は子どもではない。隠れ里の守り人として、たくさんの割り切れない現実に触れて生きてきたのだろう。
十七になるまで領城で過ごしたシグルドよりも、よほど世間の荒波にもまれている。
遠くに見えていた遺跡が、徐々に眼前に迫ってきた。
人工的に積み上げられた石が斜めにくずれ、屈まなければくぐれないような入り口が、ぽっかりと口を開けている。
「でも俺は、ちょっとルクスがうらやましい」
空に向かってそびえていたであろう柱が、真ん中から折れているのを横目で眺め、ヴァンが小さく呟いた。
発言の意図を測りかねる眼差しをシグルドが落とせば、まっすぐにそれを見つめ返したヴァンが、肩をすくめる。
「嫌味じゃないよ、本音さ」
道の両脇に沿って立ち並ぶ柱は、いずれも途中で折れ、道に障害物として転がっている。器用にそれを跨ぎ越え、ヴァンはさくさくと前に進んでいく。
「ちょっとストレートすぎるとは思うけど、それって今まで、自分の気持ちをごまかさなくても生きてこれたってことだろ? 育ってきた環境が、誠実だったってこと。まっすぐに愛されて、まっすぐに怒られて、そして許されて生きてきたんだ。それが、俺にはうらやましい」
「ヴァンは、視野が広いな」
軽々と太い柱の残骸を乗り越える背に、シグルドは言った。
片足を柱にかけたまま、ヴァンが驚いたように体を捻る。
「そうかな? 普通だよ」
照れくさくなったのか、ヴァンはふいっと顔をそむけて、一際大きな柱を飛び越えた。
*
「お嬢、奇妙な一行が遺跡に近づいてきやした!」
深い闇の奥に、かがり火が照らす一角がある。
周囲の闇を退け、皓々と輝くその一角に、薄汚い男がひとり、転がり込んだ。
どこから運び入れたものか、大きな木のテーブルに頬杖をついていた女が、ふん、と鼻を鳴らす。
「セドにもそんな度胸があるやつがいたの。意外」
高々と組み合わせていた脚をほどき、テーブルと揃いの、木の椅子から立ち上がる。
かがり火に、美しく波打つ金髪が輝いた。
獲物を見つけた肉食の獣のように、大きなすみれ色の瞳が細められた。
腰に両手を当て、不遜に顎を反らす。
「お前ら、宴の準備だ! 久しぶりのお客、たっぷり歓迎してやろうじゃないか!」
応、と答える野太い男たちの声。そして、不穏にぶつかり合う得物の音。
美しい娘は、"戦闘態勢"に入る手下をぐるりと眺め、艶やかな唇を不敵にゆるめた。
【つづく】